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フッ素化技術を活かした農薬の研究開発で食料の安定生産や農作業の省力化に貢献

  • 記事カテゴリー:

    • 食料分野
  • 関連事業:

    • 素材化学品
社会的課題
人口増に伴う食料確保、増産の問題
当社の取り組み
食料増産や保存につながる農薬の研究開発

人類は、長い歴史の中で、多くの飢餓の時代を経験しており、近代では第二次世界大戦後の食料不足が特に深刻でした。日本では戦後の食料不足を克服するのに農薬が肥料とともに大きな役割を果たし、現在でも農薬は食料の安定生産や農作業の省力化に貢献しています。ここでは当社の強みであるフッ素化技術を活かした農薬の研究開発をご紹介します。

開発のきっかけ

農薬技術については、当社の最初の有機弗素製品であります、フルオロカーボン製品を得る為の塩素化フッ素化技術が出発点となっています。これら製品を見たお客様からの新規化合物の引き合いと、それを解決する為の研究開発の推進が組み合わされることにより研究開発がスタートしました。
新規の研究開発プロジェクトではお客様のニーズをより早く獲得し、それにより早く解決することが大変重要になります。当初はお客様がより近い国内のプロジェクトを獲得していました。その後、海外の拠点を持つにいたり世界をリードする欧米大手医農薬メーカーからのニーズをより密接に、かつタイムリーに獲得することができ始めました。

開発のアプローチ

最近の例として、当初医薬品中間体として活用されていた技術が農薬中間体へ展開され、事業化された例があります。
当初、高血圧薬用の中間体を製造する目的で検討を開始した反応が目的物を得ることができず、別の化合物が収率よく合成されたことがありました。目的物を合成する反応としては失敗でしたが、これが、新たな反応の発見の出発点となりました。この反応をさまざまな原料や条件に展開することにより、新たな不斉フッ素化技術が研究者により完成しました。この技術を付加価値の高い抗癌剤、HIV薬、糖尿病薬等の国内外の医薬中間体向けで技術を適用し複数化合物で大規模にパイロット製造していました。

しかしながら、臨床開発段階で殆どの化合物が中断してしまい、クスリの裏返しはリスクであると痛感させられました。これら医薬のプロジェクトと同時期に、当社の技術を活用できる農薬中間体の引き合いが海外大手企業からありましたが、要求されるコストが国内製造では対応することが厳しく、優先度は低く設定されていました。医薬開発プロジェクトはドロップしても、技術は残ります。医薬プロジェクトがドロップした時点で、やむなく農薬中間体開発へ重点を変更し、より低コストで製造できる技術の確立に重点を移しました。研究者の努力の結果、反応条件、廃棄物処理等の技術改良に加え、国内製造からより安価で事業が可能な中国でのプラント建設へとプロジェクトを進め、事業化へとたどりつきました。

成功のポイント

中国プラントの建設立上げ

コスト的には優位といわれる中国プラントですが、建設に当たっては中国語のコミュニケーションの不十分さに加え、さまざまな国家規制に精通していないという非常に大きな障害が立ちはだかりました。
中国プラントの建設立上げでは、研究所、工場の技術スタッフに加え、現地駐在員や中国のパートナー企業との協力体制が非常に重要となります。多くの関係者の正に知と汗と涙の結晶により、当社化学セグメント初めての中国プラントが完成し、2010年より事業活動を開始いたしました。

長年の経験からなるフッ素技術のノウハウ

フッ素化合物は医農薬分野では製品の効能を高めるために非常に有用な化合物になります。フッ素化合物を合成するには、フッ化水素をはじめとする非常に危険な原料を使いこなす技術が要求され、世界でもフッ化水素を取り扱う企業は多くありません。当社には長年の経験から培ったフッ素技術のノウハウがあり、反応、製品、廃棄物の管理が世界標準の環境安全規制にも対応でき、社員のみならず地域の住人の方にも安心して操業できることが大きな強みとなっています。
医農薬の研究開発で得た技術を使うと、医農薬以外の半導体、電池材料への展開においてもさらに興味深い反応が見つかっており、こうした新たな発見を蓄積させていくことも、今後の最先端技術につなげる重要なプロセスとなります。

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