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セントラル硝子が目指す姿
研究開発型企業として地球規模の課題解決につながる製品づくりに取組む
当社は、1936年にソーダ製品の製造販売を行う化学メーカーとして創業して以来、肥料、ガラス事業、ガラス繊維事業、そして現在の主力分野であるファインケミカル分野へと、社会や産業界のニーズに合わせて事業を拡大してきました。近年、業績不振だったガラス事業の構造改革を推進し、2023年4月には国内の建築ガラス事業と自動車ガラス事業を統合した新会社を設立するなど、新たな成長に向けたスタートを切っています。
約1世紀に及ぶ歴史の中で、一貫して変わらない当社の理念は、ものづくりを通して社会課題を解決し、より良い未来の実現に貢献することです。この理念に則り、独自の研究開発に基づき地球環境問題の解決に貢献する素材・製品を提供しています。当社では、「社会課題解決製品の提供・開発」を最重要マテリアリティと位置付けており、環境課題のなかでもGHG※1の削減は、地球規模の喫緊の課題と認識しています。
当社ではGHGの排出が少ない低GWP※2製品や省エネ製品など、環境配慮型製品を数多く開発・販売しており、その規模は約800億円(化成品)で、売上全体の半分を占めています。なかでも、主要な低GWP製品によるGHG削減貢献量は600万t-CO2と自社試算しており、環境課題の解決に大きく寄与していると認識しています。
事業環境をみても、環境配慮型製品のニーズがより一層高まってきています。気候変動、GHG削減要請等、地球環境問題への対応は、当社にとってはビジネスチャンスと捉えており、事業を通じた環境への貢献に一層取組んでいきます。
GHG削減に寄与する代表的な当社製品は、電気自動車(EV)用を中心に使用される「リチウムイオン電池用電解液」です。この分野はここ数年で大きく成長しましたが、直近、EV需要の成長鈍化等により事業環境は悪化しています。需要や社会ニーズの回復を期待する一方、新たに需要が伸長すると見込まれる北米での供給体制について、すでに韓国の企業とOEM契約を結ぶなど成長地域に特化した準備を進めています。また、当社の主力事業である半導体材料分野でも、環境配慮型製品のニーズに応える素材・製品づくりに注力しています。
- GHG:温室効果ガス
- GWP:温室効果係数

サステナブルな社会の実現に貢献する長期ビジョンとパーパスを制定
こうした経営をさらに強化し、企業活動を通して環境に貢献する明確な目標を持つため、2024年5月、長期ビジョン「VISION 2030」を策定しました。「サステナブルな社会の実現に寄与する『スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー』になる」――私たちが全社一丸となって達成を目指す2030年への目標です。
2030年にありたい姿を「社内外」に共有し、組織の大きな方向性を示すことで、社員のモチベーションや一体感を高められると期待しています。また、外部のステークホルダーに対しても、目指す姿を明確に伝えることで、当社事業に対する理解が深まると考えており、今後は対話の機会も増やしながら目標や方向性を共有していければと考えています。
「VISION 2030」では、数値目標として、過去最高益である「営業利益200億円」、「ROE 10%以上」を目指しています。「スペシャリティ製品の拡大」と「エッセンシャル製品の強化」を2本の柱とする事業戦略によって、その目標を達成したいと考えています。
スペシャリティ製品とは、「技術優位性」、「独創性」、「サステナビリティ」という3つの「優位性」のいずれか1つ以上を有し、競争力を持って事業展開している製品を指します。例えば、技術優位性では「電子材料」、独創性では「セボフルラン麻酔原薬」、サステナビリティでは「電解液」が該当します。
エッセンシャル製品は、競争優位性としては決して高くないものの、社会ニーズがなくならない製品群、すなわちガラス、ガラス繊維、肥料製品、また一部の化成品等が該当します。
「研究開発型企業」としての当社の企業価値をさらに高めるためには、高収益企業への転換が必要だと考えており、スペシャリティ製品の拡大を主要戦略と位置付けました。当社のスペシャリティ製品は、すでに大きな利益ポジションを占めており、すべてが当社の研究開発から生まれた製品であるという実績があります。現在開発中の新たな取組みの中には、今後それぞれの分野で開花直前という製品も複数控えています。今後も研究開発に力を入れ、スペシャリティ製品を増加させ、2030年に営業利益200億円達成を目指します。
一方で、エッセンシャル製品の強化も重要戦略としており、適正な価格政策、ビジネスモデル変革、サプライチェーンの強化、生産性の向上等により、この製品分野での収益力も高めたいと考えています。
この長期ビジョンを策定するにあたり、ESG経営、サステナビリティへの注目度が高まっている中で、ステークホルダーに対し、当社はどのような価値を生み出し、社会課題解決に貢献するのかを社内で議論しました。その結果、自社の存在意義を改めて明らかにする必要があると考え、「パーパス」を作成しました。「独創的な素材・技術により、サステナブルな社会の実現に寄与する」――スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニーとしてサステナブルな社会を築くことが、セントラル硝子の存在意義です。
中期経営計画の営業利益目標を前倒しで達成

「VISION 2030」の達成を支えるのが、3カ年ごとに策定する中期経営計画(中計)です。現在の中計(2022年度〜2024年度)では、研究開発の強化と事業ポートフォリオにおける各事業の位置付けの明確化を重点課題とし、実行してきました。具体的には、研究開発ではコア技術を活かした機能性材料の開発推進や、オープン・イノベーションを活用した新領域の技術獲得、また事業領域においてはガラス事業の抜本的な構造改善、エネルギー材料事業のグローバルなサプライチェーンの整備などが実施してきた主な施策となります。
これらの推進により、現中計の最終年度の営業利益目標を2022年度にすでに達成いたしました。2023年度も売上高1,603億円、営業利益145億円、営業利益率9.1%となり、前年度に引き続き、現中計の最終年度の目標を上回る結果を残すことができました。
早期の目標達成は、ガラス部門での、収益化が困難であった海外事業の売却、国内での需要に見合った生産能力の大幅な縮小、その後の価格政策が大きく寄与したと考えています。
また、半導体材料の事業が需要増を背景に大きく成長してきました。コロナ禍の特需の反動から需要が落ち込む時期もありましたが、足元は回復し、今後の生成AI用途の半導体需要もあり、さらに伸びていくと考えています。
一方で、最終年度となる2024年度については、残念ながらエネルギー材料事業の市場環境の悪化や原燃材料のコスト負担増等により、営業利益は最終目標水準からいったん乖離する見込みですが、半導体関連を含む化成品事業を中心に、今後とも積極的な事業強化活動を推進します。
競争力の源泉として市場のニーズを取り込んだ研究開発力を強化
当社は、時代の変化に対応し、柔軟で独創性のある技術力で、社会に役立つ製品を提供し続ける会社でありたいと考えており、「VISION 2030」の重要戦略である「スペシャリティ製品の拡大」のためにも、お客様やマーケットのニーズに正面から応えて、積極的に提案していく、研究開発型企業として進化していきます。
「VISION 2030」では、「半導体・パワー半導体分野」「バッテリー分野」「ライフサイエンス分野」「くらし・環境・食糧分野」の4分野において、成長性の高い研究開発テーマをラインナップし、スぺシャリティ製品を拡大します。
「半導体・パワー半導体分野」では、新規エッチング剤のGas XやPFASフリーの倒れ防止剤、撥液バンク材やレジスト材料、SiCやパワー半導体向け部材の開発を進めています。「バッテリー分野」では、現行のリチウムイオン電池向けの高性能添加剤に加え、将来のナトリウムイオン電池、全固体電池関連製品の研究開発に注力しています。また、「ライフサイエンス分野」として、新たに再生医療関係の細胞シートの研究開発に取組んでいます。

そのほか、「くらし・環境・食糧分野」では、防汚・防曇鏡やPFASフリー発泡剤・溶剤、ノンプラスチック被覆肥料、また自動車ガラス向け次世代HUDなどの研究開発に注力しています。食糧分野における肥料は、日本の食生活を支える不可欠な意義ある事業ですが、残念ながら赤字基調であり、コスト削減に取組みながら、新しい商品の開発を進めてきております。
この中で、最も期待しているのは半導体分野です。お客様である半導体メーカーより低GWP、PFASフリー等がニーズとして明確に出ており、当社からのソリューションの提案、お客様の評価に手応えを感じております。
私も化成品の研究者としてセントラル硝子に入社し、その後は営業・企画畑を歩んできました。研究者時代には、フッ素塗料や電子材料を中心に研究開発を進め、例えば私たちが開発した塗料は明石海峡大橋の表面に塗られ、天候による橋の表面の劣化を防いでいます。また企画部門では、半導体向け電子材料やEV用バッテリー電解液事業の拡大も主導しました。当社がサステナブル社会の実現に寄与する長期ビジョンとパーパスを策定し、新たな成長期に入ろうとしている今は、研究者にとって自らの研究成果を未来に残すチャンスです。そんな思いで、一人ひとりが貪欲に研究に取組んでほしいと期待しています。
成長のキードライバーは「人材」
ここまでお話ししてきたビジョンや戦略を実現するキードライバーは、「人材」です。企業理念にある「ものづくり」の精神が当社のすべての事業活動の基盤であり、「ものづくり」を支えるのは、グループ社員を含む「社員」であるとの認識に立ち、「エンゲージメントの向上」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」「健康経営の推進」の3つの観点から“人財”たる社員の価値を最大限に引き出す人的資本経営を推進していきます。
すなわち、その精神を伝える教育制度の充実により、人材のレベル向上、均質化を図っています。また、専門性の高い領域については、キャリア採用を積極的に活用しリソースを充実させています。さらには、昨年、健康推進課も新設し、社員のフィジカル、メンタル両面のサポートを行うことで、パフォーマンスを高め生産性を向上させるという取組みも開始しました。
また、全社一丸となって事業を運営できるよう、社員と社長によるタウンホールミーティングを50回ほど行っています。1回に20~40人程度を集め、社員が何を考えているのか、経営陣はどうなのか、双方を一致させるために始めました。長期ビジョンやパーパスの理解促進と浸透のためにも、社員との直接の対話は重要です。社員の生の声を、今後の企業活動や経営判断にも活かしていきます。

サステナビリティへの取組みは、当社の企業活動そのもの
当社は経営基盤の強化のためESG経営を推進しています。サステナビリティへの取組みはパーパスにも掲げた当社の存在意義であり、ESG経営の柱の一つとして企業活動を通じて環境課題への対応を進めています。
まず、カーボンニュートラルに向けた取組みですが、Scope1、Scope2を合算した2030年のGHG削減目標については、ガラス事業の構造改善を進めた影響もあり、2022年度に前倒しで達成しました。そのため、今般新たに目標を、2013年度比40%削減から、60%削減に変更し、現在精力的に取組んでいます。
また、当社の環境課題への対応、取組みを評価する非営利団体CDPのスコアとして、2023年度、従前から対応を進めていたGHG排出量や水使用量等の削減の取組みが評価され、CDPより従来から大幅に上がったスコア「B-」を獲得しました。
2023年には、社内のサステナビリティ委員会や取締役会での議論を経て、環境保全への対応を含むマテリアリティを初めて策定しました。今年度は、新しい中期経営計画を策定する年に当たるため、新中計に則った環境負荷低減のための取組みを推進していきます。

情報発信と対話によりステークホルダーとの信頼関係を築く

これまで当社は、ステークホルダーの皆様に対し、当社の企業姿勢や経営方針についての発信が弱く、認知度や共感度が低くなっていたと感じています。
私が社長に就任した2023年、統合報告書を初めて発行したことを皮切りに、当社の存在意義や経営目標等について積極的に議論し、発信していく方針に転換しました。その取組みとして、長期ビジョンやパーパスの策定、資本コストを意識した経営への対応について当社の考え方を公表し、併せて「経営概況説明会」の実施や、開示資料の中身やデザインも刷新しました。ウェブサイトもリニューアルして大幅にコンテンツを拡充し、社員含むステークホルダーに有益な情報をタイムリーに発信しております。
これらの対応により、ステークホルダーとの対話が進み、理解を深めてもらう機会が増えたと感じていますし、社員からもそれらを歓迎する声が多く、発信力の強化の必要性を改めて痛感しているところです。
今後もステークホルダーの皆様には、当社の事業や考え方をもっと知っていただく一方、皆様のご意見も聞かせていただく機会を充実させ、信頼ある関係性を築けるように努力を重ねていきます。
来年には、2030年のありたい姿からバックキャストする形で、新中期経営計画を策定し公表する予定です。将来予測が難しい時代ではありますが、社会情勢、事業環境や最新の技術動向を注視しながら、スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニーを目指し、社会、お客様・取引先様、社員、投資家の将来にわたる継続的な成長と、企業価値の最大化を目指していきます。ステークホルダーの皆様には変わらぬご支援を賜りたく、心よりお願い申し上げます。
- 本メッセージは2024年9月発行の統合報告書トップメッセージより転載しています。
代表取締役 社長執行役員

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