R&D

吸入麻酔薬セボフルランの共同開発から始まった新たな事業への挑戦

  • 記事カテゴリー:

    • 健康
  • 関連事業:

    • 医療化学品
社会的課題
人々の健康維持・増進、病気の治療時のサポート
当社の取り組み
麻酔薬などの医薬品の原薬や中間体の研究開発

日常生活で起こる体の不調に対し、健康な状態に早く戻れるようサポートしてくれる医薬品。ここでは、吸入麻酔薬として世界市場でトップシェアを持つ「セボフルラン」を中心に当社の医薬品原薬・中間体であるフッ素化合物の研究開発をご紹介します。

開発のきっかけ

1970年後半にはその後の当社の有機フッ化化合物の製造事業の根幹となる研究が相次いで始まりました。この間に開発された化合物が、フッ素系全身麻酔薬「セボフルラン」の原料となり、当社における医薬品製造のきっかけとなりました。セボフルラン自体は当時、丸石製薬が開発を計画していた麻酔薬で、フッ素を得意とする当社と共同して開発に取り組みました。
当社は、臨床試験用の麻酔薬を供給するとともに、製造技術確立のためのデータの収集を進めました。また当社にとって当時全く経験のなかった原薬GMP(医薬品製造管理及び品質管理規程)に即した製品を製造する工場を建設し、1990年には医薬品としての承認が下りると同時に、宇部工場においてセボフルランの製造を開始しました。また1995年には丸石製薬よりライセンスを受けたAbbott Laboratories社(現:AbbVie社)によって海外での販売も開始されました。両社の国内外での販売により、当社のセボフルランは現在世界で最も広く使用されている吸入麻酔薬として、世界各国の手術室で大事な手術のお手伝いをしています。

開発から製造までの課題

当時、化学合成の技術においてはノウハウを持っていた当社でしたが、医薬品製造技術は皆無で、経験のある人材も社内にいませんでした。
セボフルランの製造にあたっては、医薬品管理の文化を外部から指導してもらい、急ピッチで医薬品管理体制を整えました。医薬品製造においては、GMPのルールを徹底して遵守して製造しなければなりませんが、常にそのルールも更新されるため、従来の化学品製造と異なり、社内では急激な意識改革や体制の整備強化が必要でした。

成功のポイント

フッ素に関する安全管理のノウハウ

医薬品をつくる過程ではフッ素化合物を多く取り扱いますが、当社はこのフッ素の取り扱いに慣れており、フッ素に関する安全管理のノウハウがあることが今回の研究開発において大きな強みとなりました。また当社では、川上の化合物から一貫生産することで、他社より効率よくかつ安価に製造することが可能となり、製品競争力の源泉となっています。さらに当社のセボフルランの特徴としては、麻酔にかかるのが早いことや気道への刺激が少ないことに加え、覚める際の不快感がなく、品質面でも非常に優れています。 当社では営業部門に薬剤師免許、博士号、修士号を取得している研究所出身者が多く在籍し国内外の医薬品メーカーの研究開発担当者とインターラクティブな議論を密に実施しています。今後もこれまでの研究開発で蓄積した技術の中から、お客様のご要望に応じた化合物、製造法を見つけ出し、ニーズにあったプロジェクトの提案ができるような研究開発を目指します。

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