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強みであるフッ素化学を活かしリチウムイオン電池の性能向上に貢献

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社会的課題
環境・エネルギー問題
当社の取り組み
環境対応製品として電池電解液の研究開発と事業化

地球温暖化などの環境問題が深刻化する中、これらの問題を解決するため、電気自動車やハイブリッド自動車などのエコカーの普及促進が期待されています。
これらの製品にはリチウムイオン電池が使われており、その材料に用いられる当社の電解液技術についてご紹介します。

開発のきっかけ

当社電池技術は、リチウムイオン電池が世の中に出る直前の1988年から、当社の得意分野であるフッ素化学をどこに活かすかというテーマを模索する中で、電池材料として使用されているフッ素化合物に着目したことがきっかけとなり、研究がスタートしました。
80年代後半には家庭用ビデオカメラが登場し、そこに搭載されたリチウムイオン電池向けに当社のフッ素技術を活かした純度の高い電解質という材料を研究所で少量生産していました。90年代後半になると、世界的にも環境問題に関わる規制等が厳しくなり、電気自動車などの登場をうけて、当社では電池技術の研究開発に関してモバイル用ではなく、自動車用に特化する方向に舵を切りました。
長きにわたった研究開発でしたが、試行錯誤の末、2008年に電解液の革新的な製造方法を確立し、併せて電池性能を大幅に高める新規添加剤の開発成功にいたりました。

開発における課題

電解液は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と有機溶媒、そして添加剤を混ぜ合わせて製造します。電解質はLiイオンを運ぶ役割を担うLi含有フッ素化合物が用いられます。LiPF6は元来、熱的に不安定という欠点があり、安定な電解質を使用すれば電池性能が向上すると言われていました。
そこで、当社の研究部門では代替できる性能が良いものがないかとあらゆるLi含有フッ素化合物の合成を試しましたが、ある素材は電池性能が十分ではなく、ある素材はコストが高いなどの理由から、良い代替物が見つからず、開発がなかなか進まない時期がありました。

解決アプローチ

上記のようにLiPF6の代替を探すために多くの化合物合成を試していたある時、ある化合物をLiPF6と組合せて添加剤として使用すると格段に電池性能が向上するという発見があり、当社独自の高性能な添加剤の開発につながりました。

成功のポイント

性能のよい添加物の開発

現在、当社はお客様ごとに添加剤の種類・量を最適化し、お客様のご要望に応じたソリューションを提案しながら電解液を販売していますが、研究開発の段階で様々な化合物を合成し、知見を蓄積させてきたことが、性能のよい添加剤の開発につながり、お客様に合わせたオリジナルな電解液を提供する上で、重要なプロセスとなりました。

研究者の自主性を大切にする企業風土

上記のプロセスの中で研究者が粘り強く取り組んできたことは開発成功のもう一つの重要な要因ですが、当社には研究者の熱い想いがあれば、研究を続けることを奨励する企業風土があります。当社が開発を始めた当時、電池技術は社内で事業化するまでの判断に至らず、ビジネスチャンスがあるかもわからない分野でしたが、社内で研究を続けられたのは若手研究者の自主性を尊重し、日ごろから年齢や部署の垣根を越えてコミュニケーションができる環境があったことが、その後の開発成功につながっています。

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