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セントラル硝子が目指す姿

代表取締役 社長執行役員 前田 一彦

研究開発型企業として
さまざまな社会課題の解決に
取り組んでいきます

代表取締役 社長執行役員前田 一彦

新社長就任に際しての決意と「スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー」への想い

 当社は1936年、ソーダ製品の製造販売を行う化学メーカーとして設立されました。その後併産される塩安をベースに肥料の生産を開始し、またソーダ灰を原料とするガラス事業、続いてガラス繊維事業に展開しました。そして、1980年代以降、現在の主力事業であるフッ素化技術を応用したファインケミカル分野へと事業を拡大してきました。
 しかし近年は、事業環境の変化によってガラス事業が不振に陥っていたことから、欧米自動車ガラス事業の譲渡と国内建築ガラス事業の抜本的な構造改革を断行し、収益力の回復を図りました。また、2023年4月には、国内の建築ガラス事業と自動車ガラス事業を統合し、セントラル硝子プロダクツ(株)として新たなスタートを切ったところです。
 こうした当社の転換期ともいえる2023年6月、私は代表取締役社長に就任いたしました。これまでの歴史を引き継いでいく責任の重さに身が引き締まる思いを感じるとともに、これから当社の未来を切り開いていく決意を新たにしています。

 当社は「ものづくりで築く より良い未来」を基本理念に掲げ、「ものづくりを通じて真に豊かな社会の実現に貢献する」ことを目指しています。また、進行中の中期経営計画(2022~2024年度)では、研究開発型企業として成長していく姿勢を明確に打ち出しました。
 私自身は化成品の研究者として入社し、その後は主に営業・企画部門を歩んできました。その間、ファインケミカル分野での新規事業の立ち上げや海外拠点の展開を通して、半導体向け電子材料やEV(電気自動車)用バッテリー電解液事業の拡大を主導してきました。
 今後の経営にあたっては、長年にわたり「ものづくり」に関わってきた経験を活かしながら、企業理念の実現に向けて事業展開を進めてまいります。まずは、大きく育ってきた化成品の3本柱(麻酔薬、半導体材料、電解液)を中心に研究開発を強化し、さらなる成長を図っていきます。

 将来への構想としては、ガラスも含めたマテリアルという考え方に基づき、2030年をターゲットに「スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー」へと変革することを目指したいと考えています。その実現に向けたステップである次の中期経営計画(2025~2027年度)の土台をしっかりと築くことが、現在進行中の中期経営計画の役割であると位置づけ、目標達成に向けて全力で取り組んでいきます。

ガラス事業の19年ぶりの利益率5%の確保と、化成品事業の順調な拡大

 2022年度の事業環境を振り返ると、世界経済はウクライナ侵攻の長期化とロシアへの経済制裁の影響による原燃材料価格の高騰、米中対立や台湾問題への懸念、欧米各国のインフレ圧力に対する金融引き締めによる金融システム不安など、先行き不透明な状況が続きました。また、国内では新型コロナウイルス感染症に対する行動制限が緩和に向かい、経済活動の回復や雇用情勢の改善など、景気の持ち直しの動きの一方で、円安の急激な進行や原燃材料価格の高騰、消費者物価上昇が続くなど、不安定な状況にありました。

 こうした中、当社のガラス事業については、販売・生産拠点の整理、原燃材料価格高騰に対する製品価格の改定などにより、対前期で売上高は半減しましたが、営業利益は52億円の改善となり、19年ぶりに5%の営業利益率を確保いたしました。
 化成品事業については、電子材料は好調だった前期に比べて半導体市場が減速し、ユーザーの在庫調整などもあり、売上高は減少しました。その一方で、エネルギー材料はEV市場の成長に伴って、リチウムイオン電池用電解液の販売が急拡大し、売上高は前期を上回りました。電解液市場は、原材料価格や販売価格の変動が激しいのですが、当社グループは日本、アジア、欧州に合弁会社も含めて生産拠点を展開し、グローバルにサプライチェーンを構築することで、安定的な原材料の調達が可能となり、またキーマテリアルである添加剤を自社生産することなどにより、利益の確保につながりました。また、素材化学品では、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)製品である次世代発泡剤の販売拡大と、各種製品の価格改定によって売上高を伸ばしました。

 これらの結果から、化成品事業の売上高は前期を大きく上回るとともに、営業利益は約140億円となり、これは中期経営計画最終年度(2024年度)における全体の営業利益目標をほぼ達成する金額となりました。
 今後取り組むべき重点分野としては、ガラス事業においては構造改革によって黒字化した収益を、引き続き安定的に確保していくための方策や今後の投資方針等について、全社で議論・検討を進めます。ガラス繊維については、高付加価値製品への切り替えを推進することにより、利益の確保に注力していきます。
 化成品事業については、前述の通り半導体材料とリチウムイオン電池用電解液、フッ素系全身麻酔薬『セボフルラン』の3本の柱を成長させ、しっかりと利益を上げていきます。また、肥料については、農作業の省力化に寄与する被覆肥料『セラコート』に使用されているコーティング材の環境負荷が懸念されておりますが、環境に優しい材料の研究開発を推進し、新しい肥料の商品化に取り組んでいきます。

ガラス事業
化成品事業

これからの発展が期待できる分野への研究開発の取り組み

 今後期待できる事業分野としては、当社グループに限らず日本全体として半導体とエネルギーとライフサイエンスであるとの認識のもと、新規製品の研究開発を推進しています。

 半導体分野における取り組みとしては、急速に普及が進むEVの性能向上に寄与する次世代パワー半導体材料、SiC(シリコンカーバイド)ウエハの事業化があります。SiCパワー半導体は、電力変換時のエネルギーロスを大幅に削減することが可能で、現在、溶液法による6インチインゴットの量産化技術の確立が視野に入っており、より口径の大きな8インチインゴットについても、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金に採択され、補助金を活用しながら開発を進めています。

 エネルギー分野では、ナトリウムイオン電池の研究開発に取り組んでいます。現在主流となっているリチウムイオン電池に使われているリチウムはレアメタルであり、EVの普及とともに将来の供給が逼迫する懸念があります。そこで、リチウムの代替として、豊富に存在するナトリウムを使用した低コストのナトリウムイオン電池の実用化が一部で進められています。当社では以前から研究開発を行っており、ナトリウムイオン電池の材料に関する特許を保有する他、中国の合弁会社で原料となる電解質の6フッ化リン酸ナトリウムを生産・供給する計画もあります。

 このほか、ライフサイエンス事業については、従来の医薬品をいったん見直し、改めて新規ビジネスを立ち上げる方向で進めていくことにしています。

サステナビリティへの取り組みとものづくりによる社会課題解決への貢献

 当社グループは「ものづくりで築く より良い未来」という基本理念に則り、ものづくりを通じて環境・社会課題の解決を図るとともに、真に豊かな社会の実現に貢献することを目指して様々な事業を展開してきました。これは、まさにサステナビリティの考え方そのものであり、これからも地球環境や各種社会課題に対して、真摯に向き合い、研究開発型企業として、事業を通じて持続可能な社会の実現に取り組み、企業価値の向上を目指していきます。

 サステナビリティの取り組み体制については、「サステナビリティ委員会」を設置し、その施策や推進活動を総合的に把握して分析・評価し、必要に応じて取締役会に報告・提言を行っております。
 また、サステナビリティを重視したマテリアリティの特定プロセスを経て、3分野11項目の重要課題とその取組みに対する重要管理指標(KPI)を設定し、その中でも「社会課題解決製品の提供・開発」を最重要の取り組みとして位置づけました。当社の多くの事業はフッ素化学を“強み”にしており、その意味でフッ素化学品を使って各種社会課題の解決に貢献していきます。
 その代表例が、リチウムイオン電池用電解液です。またGWP(地球温暖化係数)がほぼ1に近いハイドロフルオロオレフィン発泡剤や溶剤の開発や、GWPが高い既存の高性能半導体材料から低GWP製品への切替を推進するなど、社会や環境に優しい製品を提供することで、様々な産業を支えていくことを基本方針として打ち出しています。

 一方、人的資本の考え方については、人材育成方針に沿って“素直で真面目な企業風土”を活かして、社員一人ひとりの成長と自己実現を支援する体系的な教育プログラムを用意しています。基盤教育やものづくり教育、キャリア開発教育などを、毎年内容を更新しながら、キャリア・クリエーション・センターが主導して進めています。また、人材戦略としては、「4つの確保」(受容性の確保、居場所の確保、公平性の確保、公正性の確保)をスローガンに、その機会と環境を提供することで、社員みんなが常にスマイル(笑顔)でいられるひとづくり・企業文化づくりを進め、心理的安全性の向上を図っていきます。

連結売上構成比
連結営業利益

ステークホルダーの皆様に向けた企業価値向上への取り組み

 これまで当社は、既存事業の収益力改善投資に一定の割合を割いてきました。現在は、ガラス事業の抜本的な構造改革が一段落し、利益を出せる状況になったことから、これからはきちんとした成長戦略に基づいて企業価値向上につながる成長分野に投資配分を行うとともに、そこから得られた利益を株主の皆様に還元していくという方向性を明確に打ち出していきます。

 また、私自身の考え方として、高付加価値事業によって利益を出している企業としては、現在の総還元性向30%以上という目標は、やや低いのではと感じています。これまでは安定配当を確保しつつ、事業の再構築を行っていたということで、この水準を維持してきたのですが、しっかりと利益が安定的に継続していける状況を確認した場合には、還元性向を高めていく方向で考えております。

 これからも「創造と挑戦」をキーワードに全社員が一丸となって、新たに生まれ変わったセントラル硝子グループとして、一歩ずつ前へ踏み出していきたいと思います。そして、2030年の「スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー」を目指して、現在の中期経営計画を着実に達成し、さらに次の中期経営計画につなげていけるよう全員団結して取り組んでまいります。

 ステークホルダーの皆様には、これからの当社グループの発展に期待していただくとともに、これまでと変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

  • 本メッセージは2023年9月発行の統合報告書Top Messageより転載しています。

代表取締役 社長執行役員

前田 一彦

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