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北海道大学とセントラル硝子、フロー法の活用に関する共同研究論文を発表  -創薬研究・開発プロセスの迅速化に期待-

2025.01.08

  • ニュースリリース

 当社は、国立大学法人北海道大学大学院理学研究院(以下、北海道大学)永木愛一郎教授、岡本和紘准教授との共同研究成果として、フロー法(後述)の活用に関する共同研究論文を2025年1月7日(火)公開のNature Communications誌*に発表したことをお知らせします。本論文では、フロー型反応器を活用し、トリフルオロメチル化合物の炭素-フッ素結合を選択的に1つだけ切断し、新たな官能基へとわずか数秒で変換できることを明らかにしました。

 有機フッ素化合物はその特異的な性質から医薬・農薬品、機能性材料など幅広く活用されており、当社でも数多くの有機フッ素化学品を開発してきました。その中でもジフルオロメチルユニットは他の官能基(エーテル、チオール基)の生物学的等価体として知られるなど、近年医薬、農薬分野で注目されています。しかしながら、その合成法は限られていることからジフルオロメチルユニットを簡便かつ迅速に合成する新たな手法の開発が望まれていました。  

 そのようななか、当社は北海道大学との共同研究において、フロー法(流通型反応器で微小な流路を反応場とするフローマイクロリアクター)を活用し、トリフルオロメチル化合物から極めて不安定なジフルオロメチルアニオン種を瞬時に発生させ、トリフルオロメチル基のフッ素原子を1つだけ新たな官能基に変換する化学反応の開発に成功し、世界で初めてその活性種の観測にも成功しました。本手法は、わずか6.3秒以内で反応が進行し、医薬品等の生理活性物質にも活用できることから、創薬への活用も期待されます。また抗HIV薬として知られる分子の短工程、短時間合成にも成功し、本手法の実用性を実証しました。

 今後、当社はフロー法を活用した研究開発を推進していくとともに、新しい高機能化学製品の創出に努め、社会に貢献してまいります。

*Natureの姉妹誌である英国の自然科学論文雑誌。掲載には非常に高いレベルの学術的価値が求められる。

<本研究の概略図>フロー型反応器を活用したトリフルオロメチル化合物の脱フッ素官能基変換

論文情報

論文名

Defluorinative Functionalization Approach led by Difluoromethyl Anion Chemistry
(ジフルオロメチルアニオン化学が導く脱フッ素官能基化アプローチ)

著者名

セントラル硝子株式会社
 牟田健祐 (北海道大学大学院総合化学院博士課程 所属)

北海道大学大学院理学研究院
 岡本和紘、中山大輝、和田崇斗、永木愛一郎

雑誌名

Nature Communications(英国の自然科学論文雑誌)

DOI

公表日

2025年1月7日(火)(オンライン公開)

関連情報

本件に関するお問い合わせ先

セントラル硝子株式会社
New-STEP研究所
TEL:049-246-3719