経験をベースに、独自の勉強で知識力をカバー

 大学では有機合成が専門だったので、類似した部署で働くだろうと思っていたのですが、全く違いました(笑)。半導体の材料開発という工業系の研究が配属先でした。未知の分野で、入社当時は会議では新人が議事録を取るのですが、キーワードがまずわかりません。本屋に行って本を買ってきて勉強していました。そんなスタートでしたが、実験・分析・考察と言った流れは、大学での研究と同じ。1年も経てば、言葉も仕事も覚え、ちゃんと戦力として数えられている自分に気がついて驚きましたね。
 現在は、当社の得意分野であるフッ素化合物を用いてリチウムイオン電池用材料の開発を行っています。スマートフォンやエコカーの急速な普及により、高容量化のニーズが高まっています。その要求を満たすべく、新規化合物の設計・合成・評価に取り組んでいます。

研究者にも常に求められるビジネスの意識

 研究はなかなかうまくいかないことが多いです。その中で、自分の考えたとおりの性能の目的物が合成できたときにはやりがいを感じますね。さらにその後、開発に携わった製品が市場に出たときには、本当に嬉しいです。リチウムイオン電池の電解液では、フラスコで実験していた内容が、工場で生産されて世に出るという経験をすることができました。あのときの喜びは忘れがたいものですし、いまでもがんばれる原動力となっています。
 もちろん、そんなケースはそうそうありません。考えたとおりの目的物が合成できても、使う試薬が高価であったり、製造に時間がかかる、危険が伴うなど、商品として求められる条件に合わなければ開発は中止に。努力の日々は水の泡です。そうならないよう、ビジネスの観点もしっかり持って研究に臨むようにしています。